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Doraneko&Donuts

おすすめの本と映画と音楽をお茶を飲みながらまったりと語るブログ

自伝は真っ赤なウソでも「おもしろければ」それで良い?

おすすめの本

さゆり〈上〉 (文春文庫)

※2015/12/18 リライトしました。

 

ドラねこ書店 おすすめの本27

ちわ~!。(=´▽`=)ノみんな本読んでますか?

 

みんな、「ゲイシャ」ってどんなものか具体的に知ってるかな?

今回はそんな芸者についてのうさんくさい本をご紹介しよう!

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さゆり

さゆり〈上〉 (文春文庫)

さゆり〈上〉 (文春文庫)

 

さて、今回はタイトルと違って実はオススメの本の話ではない。

 

これってどうなの?という本の話である。

というのもその本は舞妓について書かれた本である。

しかも作者はアメリカ人。アメリカ人が書いた芸者の話である。

 

いちおう最初の前書きで、作者がナゼ本書を書く事になったかの経緯が記されている。

それによると本書は、京都で働いていた元芸者の証言を元にあくまで匿名で、作者が自伝のような形で執筆しているというのだ。

 

しかし、これは真っ赤なウソだ。

詳細は後述するが、アメリカ人がナゼまたそんなもんを書きだしたのか?

外国人が書いた芸者の話なんて本当におもしろいのか?

そんな疑いを持ちつつ、 ベストセラーだからと読んでみると、意外とおもしろいw

 

しかし、おもしろいからタチが悪い

途中、読んでいてつらい部分もあるけど、それでもグイグイと読ませる力のようなものがある気がする。

実はこの本、色々物議を醸し出しているらしいいわくつきの本なのである。

 

元芸者の話を捏造したゴールデン

ワシもコレを読むまではこの本に書かれていることは、全て本当のことだと思っていた。

でも、よく考えて見れば、日本人から見て、ちと登場人物が意地悪るすぎないか?とは思える部分があったりと、不自然で思わず首を捻ってしまうような場面も多々ある。

 

それもそのはず、作者のアーサー・ゴールデンは実在の芸者から話を聞くには聞いたが、それは自伝とは程遠い自分の都合の良いように歪曲して小説の形で発表していたのだ。

「さゆり」では登場人物の多くは彼女が知っている人物か近しい人物に該当した。

しかし、小説では意地悪で憎たらしく描かれている人たちも、実際にはとても親切であったし、千代が置屋に入ったときに奴隷のように扱われたとされている場面も実際には岩崎は優しくされ、特別な扱いを受け、"Sourpuss"は 実は非常に親密な関係にあった姉妹であったし、「延(ノブ)」は彼女の後見人であり、恋人でもあったと書かれている。

岩崎は決して公然とは言わなかったが(伝統的な日本女性は一番奥にある個人的感情は表に出さないと西洋では思われているが)、ゴールデンの本は岩崎の過去の幸せな出来事の歪んだ見解を読むようなものだった。

彼女はゴールデンに秘密を打ち明けたが、ゴールデンはベストセラーを書くために彼女の信頼を裏切った。

               さゆり (小説) - Wikipedia

このように、問題はこの小説が岩崎さんという芸者の打ち明けた内緒話を、作者が真実と違うことを大幅に書き加えてしまったことにある。

 

なぁんだ、やっぱりね。( ´∀`)

京都の芸者さん達にしては出てくる芸者さんたちがあまりに性格が悪すぎると思った。これじゃまるで「おしん」の世界だもんw

 

勝手なイメージだが、京都の女の人はもっと優しくて思いやりのある感じがするのに、この小説では主人公をいじめる芸者はみんな醜悪なシンデレラに登場する意地悪な継母みたいな奴らがいっぱい出てくる。危うくうっかり騙されるとこだったw 

やっぱりアメリカ人に日本のことを書かせようとしたのが間違いだったのだ。

 

ゴールデンがおもしろおかしく芸者の奴隷のような生活を捏造してくれたお陰で本はベストセラーになったが、それでは実際に働いている芸者にとってみればどうなのだろう?名誉毀損以外の何者でもない。

 

本書は、世界的に著しく芸者のイメージを貶めてしまったのだ。

 

それでもまだ済まされない「SAYURI」

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しかし本書は、映画化もされてるんです。

SAYURI [DVD]

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しかも製作にスピルバーグの名が連なっている

監督は別だが……やっちまったねスピルバーグw(*´∀`)

映画化した時はまだあの本が物議を醸し出していた事を知らなかったんだろうか?

 

それにしてもこんな本を出版社は売る前に事実関係を確認しなかったのか?

金のためにウソを書くとは一体どういう了見なんだろう?

 

この話に対してコメントで、

「こんなバカげたことが本当に起こるのか?いくらなんでも出版社が事実関係を調べるだろう!」

というようなお叱りの質問を受けた。

なのでリライトに際してこういった事件についてよく調べてみた。

 

すると町山智浩の キャプテン・アメリカはなぜ死んだかという本に驚きの内容が掲載されていた。

キャプテン・アメリカはなぜ死んだか (文春文庫)

キャプテン・アメリカはなぜ死んだか (文春文庫)

 

それはなんと、アメリカでは身内による「ウソの虐待話」や自分のしょうもない半生(アル中やヤク中)をあたかも実在した奇跡の「感動話」など、メチャメチャな物語にしたてて本を書くという事件が多く発生しているという。

 

このような嘘っぱちを「実話」として売るような事件が相次いで起こっている理由は以下の4つ。

  • まず出版社は個人の回想の信ぴょう性を確かめようとしないこと(あまりにもつらい過去であれば、読者はそれをまず真実だと思って信じてしまう)
  • アメリカでは創作文学が日本ほど売れないので、昔だったら「私小説」として出版されるものを無理やり「ノンフィクション」として売ってしまうらしい。それにたとえ嘘っぱちを「実話」と偽って本にしても、それを裁く法律はない
  • 最後に一番タチが悪いのは、そうした「不幸な人々」や「聖なる野蛮人」のことを読んで「癒やされたい」「感動したい」という「感動乞食」というような消費者がそういった物語を求めるため需要が途絶えることがない

参考文献 『キャプテン・アメリカはなぜ死んだか?p219』

このような現代アメリカ出版会に根深い病巣があるため、

今でもウソを「回想録・自伝・ノンフィクション」と偽って本を書き、大金を手にする者達が後を絶たないそうな。 

普及版 リトル・トリー

日本でもそうした本ある。

古くはアメリカでベストセラーになったリトル・トリー(76)が、

著者自らのインディアンの生活や知恵などの半生を綴った「本当にあったインディアンの実話」として売り出し、日本でもロングセラーになったりもしている。

普及版 リトル・トリー

普及版 リトル・トリー

 

しかし書いたのはネイティブ・アメリカンとは縁もゆかりもない白人で元KKK。

『リトル・トリー』の出版元であるDelacorte Pressはカーターを「チェロキー族部族会議の語り部である」としていた。 しかしながら、チェロキー族によると、『リトル・トリー』におけるチェロキーの言葉や風習の描写は不正確であり、キャラクターはステレオタイプであるとしている。学者や批評家にもこれに賛成するものがおり、カーターによるインディアンの扱いは差別的なコンセプトである”気高い未開人”("Noble Savage")に基づいているとしている。

アサ・アール・カーター - Wikipedia

作者の白人は、無許可で話を創作し、おまけに印税を1%もネイティブ・アメリカンたちには払わず、ネイティブの人たちの名誉を毀損したとして訴えられている。

 

日本だったら考えられないことだけど、でも大手新聞社誤報真実だと思い込む騒動とかはあるから似たようなもんかwww

GoHoo | マスコミ誤報検証・報道被害救済サイト

 

売れれば何を書いても良い?

まぁ色々考えさせる問題作だが、フィクションとしてあくまで物語を楽しませるつもりで読むのならおもしろい本であると思う。

 

しかし、わしはこの手の本は嫌いだ。

何故ならこの本は「実話」として売り出しているからである。

本を売るためなら事実と違ったことがそこに書かれていてもそれで良いのだろうか?

確かに物語としてそれはおもしろいが、それなら初めから「フィクション」として売りだせばよい。

それなのにこの本はあくまで「自伝」として書かれている。

これはさゆりのモデルになった岩崎さんや実際に芸者として働いている人たちに失礼ではないのか?

 

と、熱く社会正義のようなことを叫んでみたが、 あなたは本書を読んでみてどう思いますか?