
ちわわ、ちわ~!おいさんだよ!
キミはセロニアス・モンクは好きかい?
モンク?
ジャズピアニストだよな? 興味ないなぁ。


む、興味ないとは片腹痛い。モンクは“異端”の天才なのじゃ!
でもジャズって難しそうで、オレにはわかんねえし。


それが本書を読むと分かるのじゃ。
村上春樹が翻訳&編纂し、モンクの世界を紐解いておるぞ。
ふ~ん、村上春樹ってモンクが好きなんか。

\ ココがポイント!/

『セロニアス・モンクのいた風景』は村上春樹が編纂と翻訳を手がけた、モンクの深遠な音楽世界と人生を紡ぐ珠玉のエッセイ集なのじゃ!!
モンクの代表作から逸話、共演者の回想まで幅広く網羅し、ロレイン・ゴードンやスティーブ・レイシーら複数の評論家の寄稿も収録。
春樹自身による序文や選曲エッセイにより、単なる伝記以上の“現場の空気感”が再現されている。モンクについては「Brilliant Corners」「5 by Monk by 5」など具体的な作品名も登場し、本物のファンであることが伝わる。ジャズ初心者からマニアまで幅広く刺さる作りであり、モンクの孤独で不協和音に満ちた軌跡を、春樹の筆致から鮮やかに追体験できる構成になっている。
この本は音楽と人生を交差させる好適な一冊である。
セロニアス・モンクのいた風景
やはりスゴイ男だったんだ。
この本を読んだ第一印象はそれだった。
わし自身、セロニアス・モンクの音楽は大好きで、彼の音楽との出会いは大学時代に遡る。
本書を編集・翻訳をしているのはご存知・村上春樹氏だが、冒頭ではこのブログでも紹介した「ポートレイト・イン・ジャズ (新潮文庫)」に収められたセロニアス・モンクについて言及した文章が再録している。
読み進めていく内に、「ああ……そうだった。モンクさんは確かにそんなミュージシャンだったなぁ」という感慨深い思いで読み進め、Spotifyでセロニアス・モンクを検索しながら彼の音楽を流しっぱなしで読了した。
セロニアス・モンクは言わずと知れたモダンジャズの巨匠である。
だが、当時のモダンジャズの立役者のチャーリー・パーカー(バード)やマイルス・ディヴィスに比べてなんとなく影が薄いような感じがするが、そんなモンクさんが以下にそうしたJAZZの巨人たちに負けない素晴らしいミュージシャンであったかを様々な関係者の証言によって語られる。
色んな人の目線でモンクという1人の巨魁を語り尽くしているのだが、それでありながらコレほどまでに寡黙で堂々として自らの道を信じて突き進んだ、富や名声に恵まれるのが遅すぎたJAZZの巨匠は、モンクを置いて他にないだろう。
モンクの音楽は一見すると難解で、とっつきにくく、どこか人を食ったような曲調がずっと展開されていくが、それでいて不思議な場所へストンと落としてくれる。そんな心地よいモンク節のようなシグネチャーを持ったミュージシャンである。
そうしたものを受け入れられない聴衆を尻目に彼は最後まで自分の音楽を追求していったのだから、マイルス・ディヴィスとはまた違った意味でスゴイ男である。
奇人だとか変人だとか様々なエキセントリックなイメージが終生付きまとい、そうした世の中の評価に苦しみながらもセロニアス・モンクはモンク自身にしか生み出せない、紛れもなくオリジナルなJAZZという音楽を数多く生み出していったのだ。
その我が道を行く大きな佇まいに、個人的には大いに励まされる次第である。
ユニークで温かな人間性
セロニアス・モンクの音楽を聞いていて何よりも楽しいのは、彼の音楽の節々にみられるそのユニークさだ。
モンクのどのアルバムを聞いてみても、必ずそこにはピアノを通して大らかでひょうきんでそれでいて研ぎ澄まされた美しさをもつモンクの姿がそこにはあるし、そんなに大上段に構えずに無心彼の音楽を聞いていくと、セロニアス・モンクが紡ぎ出す音楽の中に彼自身の哀しみや苦しみ、それでいて彼の優しさが垣間見えてしまう。
本書を読んでいると、その寡黙で人とすぐには打ち解けない性格が災いしてモンク氏の人生には色んな苦しみがあったことが延々と綴られている。
そうした周囲の人の証言を一つ一つ読み解きながらセロニアス・モンクの素晴らしい音楽に耳を傾けていると、そこにはセロニアス・モンクという大きな(文字通り)ミュージシャンの足跡が目の前にあるような感じがしてなんとも胸に迫る思いがしてならない。
そんなセロニアス・モンクの心血を注いだ数々の名曲と共に、本書を紐解いてみるとそこにはいつも大きくて優しくてそれでいてユニークなモンク氏の姿が目の前に現れるかもしれない。
良いところ
あらすじ
本書は15~20篇ほどのエッセイ・評論・対談で構成されるアンソロジーで、セロニアス・モンクの音楽人生と人格に光を当てる。村上春樹が自ら序文を寄せ、彼の選曲やモンク解釈を披露すると同時に、ロレイン・ゴードン、スティーブ・レイシー、ナット・ヘントフらによる評論や証言も併録。内容には「Brilliant Corners」「Bags' Groove」「Underground」などモンクの代表作への言及が散りばめられ、彼の音楽的なターニングポイントや即興演奏の魅力が専門家視点で語られるほか、春樹自身が愛聴盤を聴きながら感じた目線も味わえる構成となっている。対談形式の一節もあり、モンクの人間的な側面――孤高さ、ユーモア、生活観等――も垣間見える。
音楽史の位置づけと個人の共鳴が交錯する読み物であり、春樹の視点を通じてモンクの“風景”が読者に新鮮に映る演出が効いている。
では以下に良いところを挙げていこう!
村上春樹による“愛ある入門編”的エッセイ
序文や短いエッセイで春樹自身がモンクの魅力を語る場面は本書の白眉。
作品名や演奏の瞬間を具体的に語ることで、モンクの音楽性と人となりを直感的に知る入り口を提供する 。初心者が遠慮なく一歩踏み出せる道しるべだ。
多様な声が重なる多角的視点
ロレイン・ゴードン、スティーブ・レイシー、ナット・ヘントフら複数のジャズ批評家や演奏家による寄稿で、マニアックな専門性と人物像が深掘りされている。技術論からセッション秘話まで、モンクの全貌が立体的に描かれる。
具体的楽曲分析が核心を突く
「Brilliant Corners」「5 by Monk by 5」など具体的な楽曲が取り上げられる点も重要。楽曲の構成や演奏技術、即興演奏の妙など、実際にモンクの音を耳にする前でも、音楽の本質に触れさせる設計。
気になった方はこちらからどうぞ
悪いところ
では以下に悪いところ挙げていこう。
ジャズ初心者には濃すぎる情報密度
音楽理論や楽曲分析が多く含まれており、ジャズに詳しくない人には難解と感じる部分もあるだろう。巻末の用語解説などがもう少し充実していればなお良かった。
春樹エッセイの比重が少なめ
村上春樹による序文やエッセイは魅力的ながら全体の内容に対しては量的に控えめ。彼の文体を楽しみたい読者は、もっとページ数を期待してしまうだろう。
専門家寄稿の文体にやや硬さ
専門家寄稿は密度が濃く読み応えがある反面、ジャズ初心者には学術的に感じられ、一部文章が硬質に映る。読み進めるには集中力が求められる。
そこらへんは好みだろうけど、気にならないヤツは気にならないだろうな。

まとめ
こんな人におすすめ!
- セロニアス・モンクの音楽世界を深く理解したいジャズ愛好家
- 村上春樹が翻訳&編纂したジャズ関係書が気になる読者
- 楽曲分析と人生エピソードが融合した音楽読み物を探す人
『セロニアス・モンクのいた風景』は村上春樹による愛情ある序文から始まり、多数の専門家が寄稿したエッセイや対談を通じて、モンクの音楽、人生、即興性を多角的に描いた濃密な一冊である。代表作の解説や楽曲分析はジャズ技術への理解を深め、モンクの人となりに触れるエピソードは彼を“音楽以上の存在”として感じさせる。初心者には情報量過多と思われる場面もあるが、音楽が好きでモンクに興味がある読者には、格好の入門書となるだろう。春の夜更けにレコードをかけながら、この本を手に静かに向き合えば、モンクの音が遠くから耳元で囁くような体験が得られるはずである。

モンクの不協和音は、ただの混乱ではない。
その奥には確かな意思と孤独が潜んでおる。本書は、その響きを静かに耳に届かせる案内者なのじゃ。