
ちわわ、ちわ~!おいさんだよ!
キミは岸本佐知子氏を知っているかい?
あの〜、翻訳家で変なエッセイを書く人だろ?


ほー、しっておるか。
エッセイと思ったら妄想混じりの一人遊びで、日常の細部にとんでもない視点突っ込んでくるんだわ。


なるほど、確かにそうじゃのう。
なかなか愉快な人だよなw

\ ココがポイント!/

『気になる部分』は、岸本佐知子による「妄想と観察」の交差点で輝くエッセイ集なのじゃ!!
タイトル通り、ちょっとした日常の“気になる部分”から思考を膨らませ、そこに妄想の種を撒く。
だがそれは単なる小話ではない。著者自身の翻訳家としての視点が織り交ぜられ、言葉に対する鋭い洞察も散りばめられている。例えば「シュワルツェネッガー」の発音問題を真剣に掘り下げる一方で、日常の雑感がどんどん妄想へ発展していく文体は、読む者を引き込み、肩の力を自然と抜かせてくれる。雑誌『白水社の本棚』に掲載されたエッセイをまとめたものであり、フィクション寄りの体験記とでも言おうか。エッセイの体裁でありながら、読み終える頃には“境界線”が曖昧になっている。
軽妙さと深さを併せ持ち、「日常の可笑しさ」を再認識させてくれる一冊である。
気になる部分
外国文学が好きである。
よく小説などを読んでいると、コレを訳している人たちは一体どんな人達なのだろう?
と思って、翻訳者はどんな人でどんな風に翻訳に携わっているのか、などという翻訳者自身に興味が湧いくことがある。
そしてそこからネットを使い、その翻訳者がそのほかに何を書いているのか調べていく内に、以前なら興味もなかった面白い本にぶつかる……なんてことはわしにとって日常茶飯事である。
そんな中、ニコルソン・ベイカーなどの翻訳で知られる岸本佐知子氏の本でおもしろいものにぶち当たった。それがこの「気になる部分」という本である。
わしはたまにエッセイなどを読んだりするのだが、今まで読んだ中でもこの人のエッセイは抜群に変わっている。
何が変わっているって?
それはこの人が出会った。奇妙な事件の数々に、である。
奇妙な事件と言っても怖い話はない。ただ単純にその殆どが笑えるのである。
きのこホテル・キテレツさん
大体、翻訳者のエッセイいうと海外文学の少し硬い盛り込んだつまらない話になってしまいがちだが、この人のエッセイはごく自然体である。
自然体で、全力で変なのである。
本書「気になる部分」に書かかれている内容は普通の人ならまず体験しないようなことがたくさん書かれている。
例えば、
ワシが一番腹を抱えて笑った話として挙げると、著者のがOL時代に泊まった「きのこホテル」という奇妙なホテルの話などが好きだ。
「きのこホテル」は館内の全てが「きのこ」にまつわるものでデザインされている、一風変わったホテルで、京都に実在しているらしいw
もうこの時点で、全力で変だが、
館内のロビーが「きのこ」なら、部屋の中も「きのこ」だらけ、温泉も「きのこ」で、もちろん宴会の料理も全て「きのこ」料理!と至れり尽くせりw
特に度肝を抜くのがその「きのこ」料理のフルコースの中で、しいたけの丸太を丸々一本焼いた姿焼きなど普通ではありえない料理が出てきたりするホテルなのだ。
ここまで読んでいると、本当にそんなもんあるんかい?
と疑ってしまうが、それがどうも実際にあるらしいのだ。
このきのこランド、しいたけの栽培で財をなした菌類の博士が山を丸々買いとって建てたのが始まりだという。
そんな変わったホテルがあるのなら是非行ってみたい。というか見てみたい。
「気になる部分」にはその他にも、
作者が電車の通勤途中で見かけた数々のキテレツさんたちの話も強烈だ。
それにしても笑える。
こんな変わったエピソード満載のエッセイでここまで笑ったのは久しぶりだった。
それぐらい「気になる部分」は楽しい本なのである(*´∀`*)
フェルマータ
エッセイだけ紹介してはおもしろくないので、岸本佐知子氏が翻訳した「フェルマータ」という作品も紹介しておこう。
これはハッキリ言って、女の人が読んだらほとんど不愉快な思いをするのではないか、どちらかと言うと男が読んだらおもしろい文学である。
この本は「時間」を止める能力を身につけた男が、ひたすらスケベな行動にセイを出す話で、作者のニコルソン・ベイカーの妄想全開の物語である。
いやぁ~、それにしてもこれはすごい!
何がすごいかというと男ならだれでも考えそうなことが、普通の男が考えるよりもかなり細かく書かれている。
普通の作家ならこういった時間を止める能力を持った男の話を題材に物語を語っていこうとおもったらかなりエロ小説になってしまうのに、この物語はぎりぎりのところでそんなエロ話よりも細やかな妄想の描写がなんとも言えないおかしさを描いていて、単純なポルノになっていないところが素晴らしい。
ニコルソン・ベイカーの妄想力は圧巻といっていいほどである。
まさにここまで考えるか!?アンタの変態力に脱帽!
と言った感じの本で、これは女性には非常に受けが悪い本であろうw
男子ならかなり楽しめるだろうが、
女性はこの本を読むとかなりの頻度で嫌悪感を表すこと間違いないだろう。
しかし、この本の魅力はそうしたエロさにあるのではなく、その部分とはまた別のエロにまつわる物語の緻密さにあると思う。
まぁどんな物語かは読者に読んでもらうことにして、どちらも楽しく読めること請け合いの本であった。
良いところ
あらすじ
本書は1993年頃から白水社の既発エッセイを集めた第一エッセイ集である。
タイトルどおり、「気になる部分」を切り口にしてシュワルツェネッガーの発音、アタッシェケースの呼び方、翻訳家としての誤記・ことば遊び、雑誌記事への突っ込みなど、ありふれた日常を拾い上げる。著者はそこで得た“気になる”を元に妄想を展開し、自身の頭の中で現実と虚構を自在に遊ばせる。ある日の日常のフレーズから、過去の記憶、翻訳の裏側、言葉への愛と違和感が次々に迸る。それらはすべて「エッセイ」として括られているが、実際はフィクションとの境界線を行き来する「妄想体験記」と呼ぶにふさわしい。
読者は著者の頭の中を覗きながら、日常と想像の境を軽やかに飛び越える読後感を味わえる構成となっている。
では以下に良いところを挙げていこう!
日常→妄想へのジャンプ力
岸本佐知子の文章の醍醐味は、ほんの些細な日常から大胆な妄想へと飛ぶ自在さにある。そのジャンプ力が読者をくすくすさせつつも、不思議と深く日常を見直す眼差しのきっかけになる。
言葉への偏愛と分析の鋭さ
翻訳家としての経験を背景に、英語の発音やカタカナ化された外来語へのこだわりが随所に光る。シュワルツェネッガー発音ネタなど、ユーモアを交えた言葉遊びは読後に「なるほど」と膝を打たせる。
境界を揺らすフィクション的エッセイ
「妄想は体験」の視点を貫くことで、エッセイとフィクションの境界を曖昧にする文体は唯一無二。日常文芸としての心地よさと、小説的異様さを共存させ、飽きさせない多様性を持っている。
気になった方はこちらからどうぞ
悪いところ
では以下に悪いところ挙げていこう。
初期作ゆえの作り込み不足
一部レビューでは「ネタは面白いがまだ味わい深くない」との意見もあり、後期のエッセイ集に比べて文章の完成度にばらつきがある。
時代感が古く感じる部分も
1990年代初頭から収録された内容のため、現代の空気感とはズレがある。SNS時代の読者には「ちょっと古い」と思わせる描写も散見される。
フィクション寄り過ぎてエッセイ感への好みが分かれる
“妄想体験”として書かれるが故に、「リアルなエッセイを期待していた人」は期待と異なる風合いに戸惑う可能性がある。
そこらへんは好みだろうけど、気にならないヤツは気にならないだろうな。

まとめ
こんな人におすすめ!
- 言葉やカタカナ英語の違和感に敏感な人
- 軽妙な妄想エッセイで日常をリフレッシュしたい人
- エッセイとフィクションの曖昧な境界に惹かれる人
『気になる部分』は、岸本佐知子の原点とも言える妄想エッセイ集で、日常の端々から思考を飛ばしていく小気味よさが根底にある。翻訳家ならではの言葉感覚と、妄想を乱舞させる文体が合わさり、読後には肩の力がすっと抜ける。初期作品ゆえの粗さや時代感のズレもあるが、それもまた“第一作としての味”と思える余白として受け止められる人には格別の一冊だろう。エッセイ読書好きだけでなく、言葉や妄想的思考に興味ある人にとって、気になる部分がきっと見つかる一冊である。

ちいさな日常の違和感こそが岸本佐知子氏の妄想力を揺さぶる起爆剤なのじゃ。
境界線を曖昧に飛び越える言葉の散歩、そなたもぜひ味わうがよいのじゃ