

ちわわ、ちわ~!おいさんだよ!
キミは
『銀河鉄道の夜』? なんか暗すぎて…読むのだるくね?


む、そんなことはない!
今回紹介する新版は解説も増えとって読みやすくなっとるのじゃ
新版だろうがなんだろうが話はおんなじだろ?


されど星の幻想の中に“死”と“友情”をもっと光らせる工夫がより良くなされておるのじゃ。
なに言ってるか全然わかんねえ。

\ ココがポイント!/

『銀河鉄道の夜 改版』は、宮沢賢治による名作童話の喜びと哀しみを再構築し直した決定版なのじゃ!!
表題作「銀河鉄道の夜」に加え、「よだかの星」「セロ弾きのゴーシュ」など代表的短編も収録した14編は、どれもイーハトーヴォの豊かな自然と人間の営みを透き通るように描く。
改版によって解説と注釈が充実し、天文的背景や宗教的寓意への理解が深まり、単なる青春幻想譚では留まらない。読者レビューでは「何度読んでも受け取り方が変わる」「幻想的な美しさに溺れる」との声が多く寄せられている。孤独なジョバンニと親友カムパネルラの銀河旅は、友情と自己犠牲、そして“本当の幸い”を問う永遠の問いかけとして響く。
この新版は初めての読者にも再読者にも、新鮮な感動をもたらす一冊だろう
銀河鉄道の夜
本屋で見かけて一目惚れだった。
今年の夏、新潮社文庫のフェアみたいなものをやっていた。
歯医者の帰りにたまたま立ち寄った本屋で見かけた新装版「銀河鉄道の夜」が、紫のカバーでかっこよかったので思わず手にとってしまった。
後に知ったが、この「銀河鉄道の夜」は新装版ではなく夏限定のプレミアムカバーであったらしい。新潮社から出ている「銀河鉄道の夜」は本来、下記の写真のとおりのものだそうな。
その時は何気なく手にとるも、手元不如意で持ち合わせがなかったので買わずにそのまま本棚に戻して帰宅してしまった。しかし家に帰ってみると、どうしてもあの紫のカバーの「銀河鉄道の夜」が気になって仕方ない。その日は気になって気になって夜も10時間くらいしか眠れなかった。
そこで次の週、またしても歯医者の帰りに思い切って買おうと、本屋に立ち寄ってみたもの本屋がたまたま棚卸しをしていてその日は買えずじまい。翌々週に棚卸しが終わり新装開店になったあと本屋を尋ねるも、その時にはもうあのプレミアムカバーの紫の「銀河鉄道の夜」は姿を消してしまった。
Amazonや楽天で探してみるも見つからず、本屋の店員に頼み込んで新潮社のHPを見てもらうも、夏限定で本屋になければもうすでに生産終了とのこと。

ガーンΣ(゚Д゚)
もう、もうあの紫のカバーには会えないのか……
力尽きてうなだれるも諦めきれずにそのご3件も本屋さんを探し回り、とうとう家から遠いショッピングモールで一冊だけあの紫のカバーを発見したのである!
ああ、よかった。
これでもう出会えないのかと思った。
少しカバーがよれているけど気にしない。なぜならもうこの一冊しかないからだ。
すぐレジに持っていって即購入!
この秋、じっくりと読んでみることにした。
銀河鉄道の夜って有名だけど
「銀河鉄道の夜」って実はわし、あんまりしっかりと読んだことはない。
中学の国語の教科書に乗っていたけど、途中からしか読んだ記憶がないのだ。
全部をしっかりとストーリーを読んだのは今回が初めて。
しかしこの本は「銀河鉄道の夜」だけではない。
短編集なので「よだかの星」「シグナルとシグナレス」「オツベルと象」「猫の事務所」「セロ弾きのゴーシュ」など14編の童話が収められている。
以前このブログでも宮沢賢治の言葉をまとめた齋藤孝氏の本を紹介したことがあるが、今回紹介する本書に収められている短編はほとんど読んだことがないものばかりw
せいぜい、過去に読んだことのあるのは「セロ弾きのゴーシュ」くらいなもんである。
そんな宮沢賢治素人のわしにとって「銀河鉄道」はしかし縁のないものではない。
わしが初めて「銀河鉄道」なるものを知ったのは「映画ドラえもん のび太と銀河超特急」が最初だった。
その時映画を観た印象で「銀河鉄道」ってかっこいいな。
わしも銀鉄に乗って惑星を旅したいな。と子供ごころに思ったくらいで、今ではドラえもんの映画で一番好きな作品になっている。
その他にも、わしは「銀河鉄道」と聞くとなぜかビリー・ジョエルの「Allentown」を思い出してしまう。
なぜこの曲が?と思われる人もいるだろうが、
実は大学時代、町田の図書館で借りたビリー・ジョエルのライブ盤「ビリー・ザ・ライヴ~ミレニアム・コンサート」に収められている「Allentown」を聞いて「あ、なんだか宮沢賢治の銀河鉄道みたいだな」と、なんの関係もなくふと唐突に思ってしまったからである。
初めてこの曲を聞いたときには「アメリカにもこんな叙情的な曲を作り人がいるんだ!」と感動してびっくりしたのを覚えている。
その時は英語はわかなかったけど、調べてみると実際は「Allentown」は閉鎖された鉄工所のことを歌った歌で、銀河鉄道とはまったく関係ないw
しかし、当時はなぜかこの曲を聞いて銀河鉄道を思い浮かべてしまったのである。
歌って不思議なものだよねw
まあ、曲の冒頭で鉄工所で鉄を叩いている音がするからそれで鉄道を思い浮かべたのかもしれないけど。
とにかく、そんなうらぶれた鉄工所のある町と銀河鉄道がつながって自分の中では鮮やかなイメージを残していったのであったが、今回始めて冒頭から「銀河鉄道の夜」を読んでみてジョバンニが住んでいる街の雰囲気とかが、「Allentown」の風景と当たらずとも遠からずな感じがして少々びっくりした。
さすがに鉄工所は出てこないけど、うらぶれた街に住む貧しい孤独な少年(ジョバンニ)が、祭りの日に夢の中で親友と旅をする……という孤独な境遇がなんとなく似ていなくもない。
そんな銀河鉄道に乗って風変わりな人々とともに車窓から見えるふしぎな風景に心を奪われながら、貧しい孤独な少年は親友とどこまでもどこまでも大空を進んでいく。
しかもずっと一緒に行こうと近いあったはずのカムパネルラもいつの間にかいなくなってしまい、その先に見えるのは誰もいないまっ黒な世界へと堕ちていく。
この物語にはしっかりとした友達や人間関係というものが出てこない。
皆どこか少しおかしく、それでいて孤独なのだ。
読む前は「銀河鉄道」なんていうくらいだからもっと美しい童話なのかと思っていたけど、なんだか読みすすめていく内に、ジョバンニの孤独と自分の孤独が一つになったような気がして、ふと目が冷めたらこれも夢なんじゃないか?と思わず本を読む手を止めて、何度もあたりを見渡してしまう。
そんなふうに、「銀河鉄道の夜」は自分の中の透明な悲しみ、孤独の美しさを感じずにはいられない不思議な物語である。
これって子どもが読む童話なのかな?
子どもが読むにはちょっと複雑で朦朧としてそのイメージをなかなかつかみにくい。
童話って書かれているけど内容は恐ろしく深く、大人になっても読める話なのではあるが、子どもがこれを理解するのはちょっとむずかしいかな?と感じてしまう。
宮沢賢治の元素図鑑
特に賢治の童話を難しくしているのは物語の中に頻繁に出てくる元素の名前だろう。
賢治自身も自分は化学者だと思っていたらしく、またそうした勉強をたくさんしているため、彼の彼の物語には盛んに元素の名前が登場する。
これが宮沢賢治の物語を読んでいる内に、何が言いたいのかわからなくさせてしまう原因の一つである。
そこでわしはこんな面白い本を借りてきた。
「宮沢賢治の元素図鑑ー作品を彩る元素と鉱物」という本だ。
これには賢治の童話に出てくる元素がたくさん載っていて、それを一つ一つ丁寧にどの元素がどのようなものかを解説してくれる。
これを片手に読んでいると難解だった賢治の物語も格段に理解がしやすくなる。
川のむこう岸が赤くなりました。
柳の木や何もかもまっ黒にすかし出され見えない天の川の波もときどきちらちら針のやうに赤く光りました
(中略)
ルビーよりも赤くすきとおりリチウムよりも美しく酔ったやうになってその火は燃えているのでした。
「あれは何の火だろう。あんなに赤く光る火は何を燃やせばできるんだろう」ジョバンニは云いました。
「蠍の火だな」カムパネルラが又地図を首っ引きして答へました。
一見して「リチウムよりも美しく」なんて言われてもなんのことかわからない。
だけどこの本を紐解いてリチウムの稿を読んでいくと、なるほどリチウムの出す火というのはこんな色をしているのか、眼の前にラクラクと思い浮かべることができるので、物語の内容を理解するのにも役立つし、改めて賢治の表現の豊かさを感じることもできる。
この本はもちろん銀河鉄道の夜だけではなく、賢治のいろんな作品に出てくる元素や物質を解説してくれて非常に読み応えのある本である。
なので宮沢賢治初心者のキミもこの本を片手に銀河鉄道の夜を紐解いてみてはいかがだろう?
良いところ
あらすじ
本書は宮沢賢治の代表作「銀河鉄道の夜」を中心に構成された短編集である。貧しい少年ジョバンニと親友カムパネルラは、ある夜、不思議な銀河鉄道に乗り込み、星々や科学者、蒸気機関士や水灯の列車員などと出会う。彼らは旅の果てに「死者の世界」である南十字星を目指すが、その途中でカムパネルラが消えてしまう。実は彼は溺れた友を救うために命を落としていた。ジョバンニは現実に戻り、友の死を受け止めながら、「本当の幸い」を探し続ける決意をする。他にも「よだかの星」「セロ弾きのゴーシュ」「オツベルと象」など、動物や自然を通じて命と責任、犠牲と成長を描いた名編を収録。
改版版では注釈や解説が増え、象徴する自然科学や宗教観、哲学的意味に光が当てられ、より深い読み応えが加えられた構成となっている。
では以下に良いところを挙げていこう!
豊潤かつ普遍的な「銀河旅」の物語性
『銀河鉄道の夜』は単なる子ども向け童話ではなく「友情」「死」「自己犠牲」「幸い」の永遠の問いを描く普遍的な物語である。新版では改版版で14編を収録し、表題作の深層に寄り添う解釈を可能にする。特にジョバンニとカムパネルラのエピソードは、多くの読者にとって切なくも美しい人生のメタファーとなる。レビューでは「何度読んでも受け取り方が変わる」という声も多数あり 、まさに「一冊で多層の意味が読み取れる」作品集である。
改版で強化された注釈と解説
新版では天体や宗教的寓意などの背景が注釈と解説で補完されており、原作の難解さが緩和されている。特に銀河や南十字星、犠牲や再生というテーマへの導入が親切になっており、初読者にも配慮された構成となっている。また、他収録作とのバランスも絶妙。作品全体の統一感と幅広いテーマ性の中に、読者が自分なりの解釈を重ねやすい設計が光る。
幻想と現実が共鳴する美しい感性
宮沢賢治ならではの「幻想と現実のあわい」を改版でも見事に再現。
夜空を駆ける銀河列車や動植物を通した寓話的描写は、感覚的に読者の心を揺さぶる。レビューには「幻想的な美しさに溺れる」「透明感がありすぎて泣きたくなる」といった表現も多く、感性にダイレクトに響く描写力が健在である。
気になった方はこちらからどうぞ
悪いところ
では以下に悪いところ挙げていこう。
未完成という不完全さは受け入れ難い場合も
賢治自身が後悔を残したまま未完成で終えた作品であるため、読み手によっては「物語が中途半端」という印象を受けることもある。改版されてもその構造的曖昧さは残り、物語の完結性を好む読者には消化不良かもしれない。
文語調や説明の古さを感じる場面も
幻想的な描写は美しい一方、宮沢賢治特有の文語調や古い語彙、説明的な比喩が今の読者には重たく感じることがある。特に子どもやライトな読者層には敷居が高い可能性がある。
収録作の感情バランスが偏ることもある
14編収録と詩情豊かなラインアップだが、動物や自然を描いた寓話が多く、物語性やドラマ性を求める読者にはペースが緩慢に映るかもしれない。スリリングな展開を期待する層にはやや不向きである。
そこらへんは好みだろうけど、気にならないヤツは気にならないだろうな。

まとめ
こんな人におすすめ!
- 友情と死という普遍的テーマに感動したい人
- 幻想的な自然描写と寓意的物語が好きな文学愛好家
- 改版の注釈付きで深く読み込みたい宮沢ファン
『銀河鉄道の夜 改版』は、宮沢賢治が描いた銀河列車の旅に込められた友情、死、自我、そして幸せへの問いかけを、改版によってさらに味わい深く再構築した決定版的アンソロジーである。表題作に加え、代表短編を網羅した構成は、まさにイーハトーヴォの豊穣な世界を再確認する場となる。注釈や解説が充実し、初読者にも親切に設計されている点は特に評価に値する。もちろん、未完成のままの構造や古典的文体は人によっては敷居が高いかもしれない。しかし、それを乗り越えられる読者なら、この新版は無限に深い感動をもたらすだろう。
日々の喧騒を離れて、小さな銀河列車に乗り込みたい人にとって、最良の一冊だ。

星屑のような短い命と友情の光を、この新版が改めて教えてくれるのじゃ。胸に響く問いが、読後にも静かに残るのじゃよ。