
ちわわ、ちわ~!おいさんだよ!
キミはビッグデータを活用してるかい?
ビッグデータ?
情報がすげえゴロゴロってやつだろ?


む、その様子じゃ、よくわかってないようだの。
いまの時代はデータの量が質を超える時代じゃ。
どうゆことだ?


ビッグデータを活用すると、答えを見つけること自体が価値になったのじゃ。
⋯⋯ますますよくわからねえ。

\ ココがポイント!/

『ビッグデータの正体 情報の産業革命が世界のすべてを変える』は、量的分析による社会変革の本質を明らかにする書なのじゃ!!
著者はハーバード・オックスフォードの権威と経済メディアの編集者であり、Googleのインフルエンザ予測やAmazonの推薦システム等を通じて“全データ扱い”“精度ではなく量”“因果ではなく相関”という3つの変化を提唱している。このアプローチは既存の統計学的発想を根底から覆し、情報産業革命の本質を読み解く鍵となる。また、社会的リスクやプライバシー問題、相関と因果の境界崩壊なども取り上げ、功罪をバランス良く論じている。データ時代を生きる個人・企業・政策担当者にとって、情報の特性を正しく理解し未来を戦略的に捉えるための必読書である
ビッグデータの正体
大きい情報、大きい情報……
去年辺りから巷で囁かれていたこの言葉に、一体それが何をさすのかずっとギモンに思っていた。先日、津田大介氏と池上彰の共著を読んでいたらこちらの本を紹介されていたので図書館で借りて読んでみた。
読んで見るとびっくり。
どうやらこのIT化社会の果てに、どうやらわしらが普段何気なく排出している情報が思わぬお宝に化けるようだ。
集める情報は正確でなくていい。
とにかく大量のデータを集めてそれを独自の分析方法で従来のやり方では考えられないような結果が得られる。それまでの正確だけども狭い情報よりも、広く雑多な情報から新たな結果を見つける。
因果関係よりも相関関係を重視する分析法、それがビッグデータ。
本書ではそうしたビッグデータを使った分析方法をコレでもかと紹介している。
それまでの常識では考えられないような変化がこの世の中に起こるのではないかと期待を持たせてしまう。
ビッグデータの危機感
こうした技術系の翻訳ものを読んでいるといつも思うのだが、ホントに本書に書かれているようなバラ色の未来がやってくるのだろうか?
IT革命だスマートフォンだ21世紀になってから色んな技術が登場したが、そうしたものがもたらす恩恵も確かに感じているが、むしろ情報が第三者に筒抜けなようで非常な危機感も抱いている。
本書の第8章「リスク」と銘打たれた章に、ビッグデータの弊害が詳しく書かれているので詳しい解説は本書に譲るが、これを読んでいると衝撃を超えて戦慄を覚える。
個人に関する価値のないクズ情報も大量に集めれば個人を特定できてしまうというところや、ビッグデータ社会が行き過ぎてしまった結果「マイノリティ・リポート」のようなまだ犯罪が起こっていないにも関わらず犯罪者予備軍を特定して制裁を与えてしまう「確率にとる制裁」など、ジョージ・オーウェルの世界のようなことが現実も起こり得るかもしれないなど、「情報の産業革命」が引き起こす未来はあまり喜ばしいものではないようだ。
わしはプラスの側面よりも、そうしたマイナスの側面の方がより強調されていて、こうした変化は手放しに喜べない。
ビッグデータは所詮大企業や国のモノ?
素人考えで申し訳ないが、何しろこうしたビッグデータというものは一部の大企業やそれなりの情報分析の機関を備えた当局などでしか扱えないのではないだろうか。
素人ではビッグデータなるものを集めることも出来ないし、集めれたとしてもそれを分析することもできない。そうした情報技術の核心は、どうやらわしのような凡人は蚊帳の外みたいだ。
なので触れないものを手放しで喜べないように、扱えないものに対して本書でその有用性を絶賛するような気持ちになれないのがわしが本書を読んで抱いた本心というものである。
確かに「情報の産業革命」やAIやロボット工学などですごい変革が訪れるのかもしれないが、そうしたものに明るい部分だけを見いだせないのが、これからの未来なのだろう。
良いところ
あらすじ
本書はデータ産業革命の全体像と衝撃を10章構成で描く。
第1章では“ビッグデータ時代”の到来を宣言。第2~4章は「全データ扱い」「量が質を凌駕」「因果不要で相関重視」という3つの革新的なパラダイムシフトを提示。続いて第5章以降は、データフィケーションによって生活やビジネスがどのように変化するかを具体事例で示す(Amazon/Google等)。リスク編ではプライバシー侵害や監視社会、相関と因果の錯覚による誤判断を警告。最後に今後のガバナンスと未来展望を語り、情報洪水時代に求められる知恵と対策を提示する。
読者は“なぜそうなるか”より“それが起こる”という構造と現象を捉える訓練ができる。
では以下に良いところを挙げていこう!
読み物として面白く、事例が豊富で現実感がある
Googleのインフルエンザ予測からAmazonの推薦エンジン、一人ひとりの外見特徴から故障率まで事例がバラエティ豊かで飽きさせない 。読者は次々に現れる応用例に「そんな使い方もあるのか」と視野を広げられるだろう。
パラダイム転換を3ステップで論理的に説明
“全部扱う”“量が精度を凌ぐ”“相関が正義”という3つの章立てが明快で、読み手の理解を効率よく促進する。タイムラインも整理され、理論と現実との接続が論理的に描かれている。
長所と短所を公平に論じるバランス
情報産業革命による可能性は熱く語る一方、プライバシー侵害や誤った相関による誤判断、監視社会の懸念も正面から扱う。書き手には冷静さがあり、宣伝色を薄めながらも説得力を保っている。
気になった方はこちらからどうぞ
悪いところ
では以下に悪いところ挙げていこう。
技術的な深掘りが少ない
統計モデルやアルゴリズムに関する技術的詳細はほぼないため、理論的裏付けを求める専門家には物足りない。
相関重視が科学的探究を阻害する可能性を掘り下げ不足
「因果不要」がテーマだが、科学的理解や社会的教訓を軽視しかねない点への問題提起はあるものの、深掘りは浅く感じられる。
日本国内事例が少なく実感しづらい
主に米国企業の成功例で構成されており、日本の社会や文化に即したケースが少ないため、国内読者には遠い話に映るかもしれない。
そこらへんは好みだろうけど、気にならないヤツは気にならないだろうな。

まとめ
こんな人におすすめ!
- データ活用の本質とリスクを知りたいビジネスリーダー
- 情報産業の全体像を俯瞰したい学生や研究者
- プライバシー・ガバナンスを考える政策立案者
『ビッグデータの正体』は産業を支えるデータ構造の変化から人間の価値観までを俯瞰する実務的教養書である。3つのパラダイム(全データ扱い・相関重視・量の力)は、既存の思考枠を揺さぶり、個人や企業にとっての戦略再構築の必要性を教える。またこの革命がもたらす利便性と同時に、監視社会や誤判断の危険性にも光を当てるバランスが優れている。ただし統計理論や因果の掘り下げ、国内事例が薄いため、専門性やローカル視点を求める読者には補完が必要だ。
とはいえ情報時代に生きるすべての人が読むべき“基礎教養書”としての価値は高い。

相関だけで道しるべを求める時代が本書によって幕を開けたのじゃ。
それを操るも止めるも、人間の知恵と謙虚さ次第なのじゃ。