ちわわ、ちわ～！おいさんだよ！
キミはお茶の歴史を知っているかい？
茶って、ただの飲み物だろ。
緑茶とか紅茶とか、好みの問題じゃね。
甘いのぅ。
それは氷山の一角じゃ。茶とは歴史そのものじゃ。
またまた、そんな壮大な話あるかよ。
茶がなければ、アヘン戦争も、アメリカ独立もなかったかもしれんのじゃ！
はあ？
お茶で戦争？冗談きついわ。
＼ ココがポイント！／
『茶の世界史』は、単なる飲み物としての「茶」を越えた、「歴史を動かす触媒」としての茶の物語なのじゃ！！
中国の霊薬から始まり、宗教、貿易、戦争、植民地政策にまで深く関与していく茶の軌跡は、人類史の裏側にある巨大な因果の流れを明らかにする。本書を読めば、カップ一杯の茶がもたらしてきたものの重みに驚くと同時に、世界史への見方が一変するだろう。茶は嗜好品などではない。
歴史の燃料であり、文明を変えた液体である。
茶の世界史
なかなか興味深い本である。
今までわしもお茶の本はいろいろ読んできたが、西洋人自らが西洋史を紐解きつつお茶について語った本はこれが初めてである。
この本はよくあるお茶の美味しい淹れ方や、お茶の種類を解説したホッと和むような本ではない。
西洋が、長年中国からお茶を輸入しつつ、自身の植民地でお茶を栽培するまでの欧米列強による搾取の物語をつづった歴史書である。
これを読んだら、もうあなたは今までと同じようにはお茶は飲めません（特に紅茶）
血と涙によって作られた茶の世界
これを読むまで知らなかった。
世界的に見たお茶の歴史が、数多くの血と汗と涙の悲劇に彩られていたことを。
西洋のお茶の栽培の歴史は、インドを中心とした植民地の奴隷労働から始まる。
それまでは、全てお茶を中国からの輸入に依存していた。
それは西洋（特にイギリス）はその風土によってお茶を自国で栽培出来なかったからである。
それが大航海時代を境に帝国主義が世界を圧巻し、インドを植民地として獲得したイギリスは、まずはコーヒーをインドで栽培をし始める。原住民を奴隷として酷使しながら。
しかし、そんな金儲けを企むイギリス人どもをあざ笑うようにコーヒーの木は一つのウイルスによって全滅してしまう。
そんな中でも粘り強く頑固な職人気質を持ったスコットランド人の手によって、農作物が壊滅状態に置かれ、飢餓と貧困で喘いでいたインドをわずか６年で復活させる。
この真面目なスコットランド人こそ、インドで初めて、西洋人としてお茶を栽培させることに成功した男だった。
彼の血と汗と涙にまみれた働きにより、イギリスは中国から輸入しなくても大量のお茶を手に入れることができるようになった。
しかしそんな真面目な労働者たちの思惑とは別に大資本による大規模茶園買収の魔の手が忍び寄る。
金儲けを企む大資本の介入により、インドは奴隷労働と搾取の場になるのだった。それがかの有名な紅茶メーカー・リプトンの前身である。
こうして紐解いていくと西洋の茶の歴史はおもしろい。
日本のお茶がぼんやりとした平和な思想のもとに大成していった。
日本の茶の歴史はここでいちいち紐解くまでもなく千利休によって身分の卑賤も階級の上下も差別されない誰もが平等に楽しめる茶の湯として始まった（北野大茶湯 - Wikipediaなど）
それに比べ西洋は過酷な支配と労働によって生み出されていくのである。
それが今でも続く帝国主義の産物なのである。
コーヒーも男女平等に飲めなかったイギリス
西洋では茶を飲むことは誰もが平等に喫するものではなかった。そこには階級制度の元、厳格な差別があった。
イギリスではコーヒーは男が飲むべきものであるとして、男たちだけがコーヒーショップに入り浸り、株や冒険や商売の話にのめり込んで夜な夜な盛り上がり、ついには夜のお勤めも放棄してしまったというｗ
そしてコーヒーは女が飲むべき飲み物ではないと、コーヒーショップに入ることも禁止してしまい、当時の貴婦人たちからコーヒーを取り上げてしまったそうな。
この仕打ちに女たちが収まるはずがない。
コーヒーショップから閉めだされてしまった女たちは、腹いせに上流貴族の女たちを中心にして、当時珍しかったお茶を女たちが自由に楽しめるように運動を繰り広げ、今に通用するお茶のマナーなどを作り、逆にお茶を飲めない男たちを無作法者と相手にしなかった。
こうして、女たちから総スカンを食らった男たちは、自ら頭を下げて女たちがティーパーティーを繰り広げている席に赴き、その手ほどきを受けてご機嫌を取る破目になった。
こうして、立場は完全に逆転した。イギリス女のなんとしたたかなことよｗ(；´∀｀)
お茶の需要がますます高まるにつれ、茶の価格も高騰し、その需要に答えようと金儲けに抜目のない野心家たちが、なんとか自国で茶を栽培出来ないものかと自国を飛び出すのだった。
それが、後々世界に悲劇をもたらすことになるのである。
瞠目すべき日本の茶の歴史
インドでは原住民が過酷な奴隷労働で酷使され、中国ではアヘン戦争が勃発し、かつての大国は、見る影もない屈辱の植民地として堕していくことになる。
西洋の欲望が、彼の地に現代まで続く根深い傷跡を残すことになる。
そのせいでインドは世界で最大の茶の生産国になるのは、歴史の皮肉だろうか？
そう考えると日本のお茶の歴史のなんと幸せなことよｗ
植民地や不当な搾取に遭うことなく、日本の「茶の湯」は独自の文化として発展することができた。
それこれも日本の武士階級たちが、影に日向にあの戦国の世を切り抜けながら、つかの間の平和をいまこの時は身分を忘れて楽しもうと千利休に茶の教えを請うたから、おかげでわしらは血塗られた歴史に彩られずにお茶を楽しむことができる。
そう考えると、千利休はエライ！ って話になるのかのう？
良いところ
あらすじ
『茶の世界史』は、茶の起源と伝播を軸に、世界の政治・経済・文化との関係性を探る歴史書である。中国で霊薬として扱われていた茶が、仏教の普及とともにアジア中に広まり、西欧列強の欲望に火をつける商品となり、紅茶の需要が帝国主義とアヘン貿易を生んだことを描く。イギリスが茶を求めてインドを植民地化し、アメリカでは「ボストン茶会事件」が独立戦争のきっかけとなるなど、茶は歴史の転換点に常に関与していた。近代における日本の茶産業や、今日のグローバルビジネスとのつながりも示されており、「茶を通して世界を読む」ことの面白さを感じさせる構成となっている。
次に本書の良いところを挙げていこう！
歴史の裏側に潜む「茶」の力を描くスケール
本書は、教科書には載らない“もう一つの歴史”を、茶という切り口から暴いていく。
そのスケールはアジアから欧米、アフリカにまで広がり、読者は茶がいかにして帝国の欲望を煽り、戦争と革命を生んできたかを知ることになる。歴史を「茶の視点」で読み解くというアプローチが斬新であり、他書にはない視野をもたらしてくれる。
アカデミックかつ読みやすい翻訳
本書は海外の学者によって書かれたものでありながら、翻訳が非常にこなれており読みやすい。
難解な学術用語を避けながらも、事実関係には厳密で、読後には確かな知識が残る。「世界史が苦手だった」という読者にもわかりやすく、知的好奇心を刺激し続ける文体となっている。
日本の茶文化とのリンクも豊富
世界的な視点に立ちながらも、日本の茶道や静岡の茶産業などにも触れられており、読者が「自分ごと」として受け止めやすい構成になっている。特に明治以降の日本が「茶」を輸出産業としてどう活用したかなどは、経済史としても興味深い。
世界の茶の歴史がこれ一冊にぎゅっと詰まっているのじゃ！
気になった方はこちらからどうぞ
悪いところ
次に本書の悪いところを挙げていこう。
専門用語や固有名詞がやや多い
読みやすいとはいえ、歴史的な用語や人名、国名が頻出するため、歴史にあまり馴染みのない読者には取っつきにくさがある。
一部の時代・地域に偏りがある
中国〜イギリスの話に多くのページが割かれているため、アフリカや中東の茶文化などにはあまり深く踏み込まれていない点はやや惜しい。
ビジュアル資料がほとんどない
文章中心の構成であり、図版や地図がほぼない。視覚的に理解を助ける要素が乏しいため、イメージがつかみにくい場面もある。
そこらへんは好みだろうけど、気にならないヤツは気にならないだろうな。
まとめ
こんな人におすすめ！
- 世界史をもっと深く、違う視点で読み直したい人
- お茶が好きで、その文化的・歴史的背景に興味がある人
- 教養としての「食と飲み物の歴史」に関心がある人
『茶の世界史』は、お茶を単なる嗜好品ではなく、世界史を動かした立役者として再定義する一冊である。
戦争、貿易、宗教、産業、革命──すべてに茶が関わっていたという事実は、読む者の常識を覆す。本書は決して難解ではなく、知的好奇心さえあれば誰にでも楽しめる。もしも「世界史は苦手だ」と思っているならば、まずはこの一冊から始めるべきだろう。
茶を知ることは、世界を知ることなのだ。
毎日飲んどる一杯が、かつて帝国を動かした液体だったとは……茶の歴史は、面白いものなのじゃ！
