
ちわわ、ちわ~!おいさんだよ!
キミは
“どこにもない国”って、また現実離れしてんなぁ。


しかしそんな幻想的な世界も現実とは薄皮一枚なのじゃよ
幻想小説かよ?読むの面倒くせーな


本書はアンソロジーは意外と読みやすいのじゃ!
ホラーとかじゃねえだろうな?

\ ココがポイント!/

『どこにもない国 現代アメリカ幻想小説集』は、名訳者・柴田元幸が選んだ9篇の幻想短編であり、現代米文学の最前線を「不在=異界」の視点から浮かび上がらせる力作なのじゃ!!
収録作にはカフカ的な“不条理”からジョイス・キャロル・オーツの嫌悪感まで幅広く、恐怖とユーモアの狭間を泳ぐ鮮烈な作家たちが並ぶ 。
読後に「どこにもないはどこにでもある」と思わせる一冊は、幻想世界への傾倒と同時に、現実の境界を問い直す契機を提供する 。幻想小説初心者にも手が届きやすいだけでなく、経験者にも新たな異界体験を与える。
翻訳者の巧妙な選者視線と名訳の輝きが融合したアンソロジーである。
どこにもない国
「いま・ここ」がゆらぐと書いてあるけど、ホントそう。
読んでいると軽いめまいを覚えてしまうような幻想的な小説群である。
「幻想」というまさにこの言葉がふさわしい本書は、訳者の言葉を借りれば「過去20年くらいアメリカで書かれた幻想小説」を9つ集めて翻訳したアンソロジー。
のっけからエリック・マコーマックの「地下室の査察」で始まるような何処か不思議でなんとなく不気味なストーリーが読み手を今ここではないどこかへと連れて行ってくれる。
得体の知れない闇を秘めた男
個人的には2つ目のピーター・ケアリーの「Do You Love Me?」なんかが少し悲しくて好きだが、3つ目のジョイス・キャロル・オーツの「どこへいくの?どこへ行ってたの?」なんか鳥肌モノであるw
これは女の人が読んだら卒倒してしまうんじゃないかと思われる変質的なストーカーの話だよね^^;
コニーをとにかく連れだしてしまおうと口説いてくるアーノルドという若い男は不気味でありながらもどこか信用出来ない感じで、読み手である読者は非常に警戒感を抱きながら読み進めていくことができるが、常に刺激を求めるティーンエイジャーには殊の外、こういった男は魅力的に映るに違いない。

わかるわ~、女って悪い男に弱いんだよね
世の中にはこんなに真面目で優しいブログを書いているナイスガイがいるってのにナゼそっちをえらんじゃうんだよw
でもこのアーノルドという男は、そこら辺の悪い男とはまた少し違った、得体の知れない闇を秘めた男の香りがそこはかとなく漂っていて、読んでいるとゾクゾクしてくる。
こんなんに家に勝手来られたら怖いw
わしだったらすぐに網戸閉めちゃうんだけどなw(*´∀`*)
「ここではないどこか」のリアルな世界
この本の中には本当に「幻想」としか言えないようなストーリーがたくさん詰まっている。
マジックリアリズム満載の短編がたくさんだが、他に気になるものでいえば 最後の少し長めのお話「ザ・ホルトラク」だ。なんてことはないコンビニで働いている若いお兄ちゃんたちの話なのかと思ったら、なんだかよくわからない世界に暮らしている感じの、「ここではないどこか」感が非常に好きである。
ゾンビが出てきたり、聞見ゆる深淵なんてよくわからない下の世界がポッカリと開いていたりと、読んでいて少し長いんだけど、だんだんこのわけのわからなさ加減がたまらなくなってくる。
コンビニで働いている若者の話のはずなのに、明らかに「僕らと違う世界」に存在するこの日常がなんとなくおかしいw
わしには絶対思いつかない展開で淡々と描かれるそれらの日常は、まさに読み手であるわしらを「ここではないどこか」へ連れていく先の展開が読めないストーリーである。
雨空の下どこにも行けずに退屈している方に是非オススメな一冊である。
良いところ
あらすじ
本書は柴田元幸が過去20年ほどの間に発表された現代アメリカ幻想小説を9篇厳選し、自ら訳と編を務めたアンソロジーである。収録作にはエリック・マコーマック『地下堂の査察』、ピーター・ケアリー『Do You Love Me?』、ジョイス・キャロル・オーツ『どこへ行くの、どこへ行ってたの?』、ケリー・リンク『ザ・ホルトラク』など多彩な顔ぶれが並ぶ。どれも現実と異界の狭間に生きる人間を描き、時に“恐怖のジャガイモ”のようなブラックユーモアも織り交ぜる。全体として「永遠に近くて遠い心の神秘」にアクセスする幻想回路として機能する構成だ
では以下に良いところを挙げていこう!
編集の妙――9篇で“異界”の地図が浮かぶ
柴田元幸が編むことで作品群の中に共通する「不在の国=異界」が一つの地図として読者に立ち現れる。収録作にはホラー的要素もあれば、シュールあるいはブラックユーモアもあり、この統一性のなさが逆にアンソロジーとしての魅力を醸し出している。幻想ジャンルの多様性を味わえる濃密な一冊だ。
翻訳の質が幻想世界に没頭させる
柴田元幸自身が訳すことで原文のニュアンスが巧みに日本語へ溶け込み、かつ独自の「訳臭」を残して幻想の気配を濃く伝える。特に『地下堂の査察』や『見えないショッピング・モール』などでは訳し方に工夫があり、読者は作品世界に自然と没入できる。
恐怖とユーモアが同居する異常な魅力
本書には“恐怖のジャガイモ”のような異様で笑える怪異があり、物語の緊張と解放の波が強い。読後に残るのは「薄皮一枚向こうの異世界」が垣間見えたような、心地悪くも忘れられない余韻である。
気になった方はこちらからどうぞ
悪いところ
では以下に悪いところ挙げていこう。
世界観の統一感に欠けるという印象
9篇を並べてもそれぞれトーンが大きく異なるため、「この世界に浸った」という一貫した読後感を好む読者には散漫と感じられる可能性がある。
短篇ゆえの物足りなさ
一篇一篇は鋭いが短いため、長編のように背景や登場人物への深い感情移入は難しい。読後、もっと読みたいと思って終わる作品も多い。
幻想初心者には難解または重い可能性
幻想小説に不慣れな人には特にシュールなテーマ(植物が人を襲うなど)は理解/消化に時間がかかり、読書に疲れることもある。
そこらへんは好みだろうけど、気にならないヤツは気にならないだろうな。

まとめ
こんな人におすすめ!
- 幻想小説初心者で、異世界導入を味わいたい人
- ジョイス・キャロル・オーツなど現代米作家を試したい人
- 恐怖とユーモアのミックスが好きな小説ファン
『どこにもない国』は柴田元幸による現代アメリカ幻想小説の厳選アンソロジーであり、9篇を通じて“不在の異界”と“皮肉を含む恐怖”を描き切っている。編者の巧みなセレクションと時にユーモアを交えた訳文により、幻想ジャンルの多彩な顔が浮き彫りになる。持ち味は短篇ゆえの鋭さと余白の多さであり、読者はそれぞれの感覚で異界体験を受け取ることができるだろう。ただ作品間のトーン差や短篇の制約を苦にする人もあるかもしれない。
それでも「どこにもない」のに「どこにでもある」異界の気配を見たいならこの編集による9篇は最上の入口である。

異界とは遠くにあるものではない。
日常の隙間にも“どこにもない国”は漂っておるのじゃ。